こんちゃー!一級建築士のmachiです🎵
打ち合わせで「うちは断熱等級6です」と言われて、なんとなく安心していませんか。
その数字、住んでいる地域によって中身がまったく違います。そして等級が高くても、実際に建った家が快適とは限りません。
一級建築士として木造住宅の設計・監理を22年やってきて、カタログの数字と実際の家がズレる場面を何度も見てきました。この記事では、そのズレがどこで起きるのかを書きます。
- 断熱等級の基準値は全国共通ではない。地域区分1〜8で別の数字
- 北海道の等級4と東京の等級4は、まったく別の性能
- 省エネ基準が見ているのはUA値と一次エネルギー消費量だけ
- 気密(C値)は法規制の対象外。等級6でも隙間だらけがあり得る
- 熱の出入りは窓が最大。等級より窓の仕様で決まる部分が大きい
- 同じ図面でも施工品質で性能は落ちる。ここは書類に出ない
- 等級6あれば十分。等級7はコスト・間取り・窓に制限が出る
2025年4月から、省エネ基準への適合が義務になりました
制度の話は短く済ませます。
2025年4月以降に建築確認を受ける新築住宅は、省エネ基準への適合が義務になりました。基準に適合していないと、そもそも工事に着手できません。
この「省エネ基準」が、断熱等性能等級でいう等級4にあたります。つまり等級4は合格ラインではなく、最低ラインです。
断熱等級の数字は、全国共通ではありません
ここが最初のつまずきポイントです。
日本は南北に長いので、全国を8つの地域に分けて、それぞれ別の基準値を定めています。同じ「等級6」でも、北海道と沖縄では求められる性能がまったく違います。
まず、自分がどの地域か確認してください
| 地域区分 | おおまかな該当エリア |
|---|---|
| 1・2地域 | 北海道 |
| 3地域 | 青森・岩手・秋田など |
| 4地域 | 宮城・山形・福島・栃木・長野の一部など |
| 5地域 | 関東・中部の内陸部、山間部など |
| 6地域 | 東京・大阪・名古屋・福岡など、平野部の大半 |
| 7地域 | 宮崎・鹿児島など |
| 8地域 | 沖縄 |
区分は市町村単位で定められています。同じ県のなかでも、平野部は6地域、山間部は5地域や4地域、ということが普通にあります。
上の表はあくまで目安です。ご自身の市町村がどの区分かは、必ず正式な一覧で確認してください。設計者に聞けばすぐ答えが返ってきます。
地域区分ごとのUA値基準
UA値は「家全体から熱がどれだけ逃げやすいか」を表す数字で、小さいほど高性能です。
| 等級 | 1・2地域 | 3地域 | 4地域 | 5〜7地域 |
|---|---|---|---|---|
| 等級4(省エネ基準) | 0.46 | 0.56 | 0.75 | 0.87 |
| 等級5(ZEH水準) | 0.40 | 0.50 | 0.60 | 0.60 |
| 等級6 | 0.28 | 0.28 | 0.34 | 0.46 |
| 等級7 | 0.20 | 0.20 | 0.23 | 0.26 |
この表を、少し違う角度から見てください。
1・2地域の等級4はUA値0.46。5〜7地域の等級6もUA値0.46。
つまり数字としてはまったく同じ性能です。北海道では最低ラインの仕様が、東京では上位等級として扱われます。
「等級6の家です」と言われたとき、その等級がどの地域の基準での話なのかを確認しないと、性能を比べられません。他県のハウスメーカーの実例を見て「うちも同じ等級だから同じ」と思うと、そこがズレます。
では、自分の地域では等級いくつを狙うべきか
ここは断言しにくいところです。予算にも、暮らし方にも、土地の条件にもよります。そのうえで、実務での感覚を書きます。
| 地域区分 | 現実的な目標 |
|---|---|
| 1〜3地域 | 等級5では寒さを感じやすい。等級6以上が現実的 |
| 4・5地域 | 等級5を最低ラインに、等級6を目標。暖房費の差が出やすい |
| 6・7地域 | 等級5で及第点、等級6で体感が変わる。等級7は費用対効果が読みにくい |
| 8地域 | 断熱より日射遮蔽と通風が優先。等級の議論とは軸が違う |
machiの結論:等級6あれば十分です
意見が分かれるところですが、私の考えを書いておきます。等級6まで確保できていれば、それで十分だと思っています。
理由は、この記事の後半で書く「窓」の話とつながっています。UA値を下げるいちばん手っ取り早い方法は、窓を小さくすること、減らすことです。
等級7の水準(5〜7地域でUA値0.26)まで下げようとすると、断熱材とサッシのグレードを上げるだけでは届かない場面が出てきます。そこで設計は、窓を削る方向に動きます。
- 窓が小さくなる、数が減る:明るさ・眺望・開放感が犠牲になる
- 大きな開口が取りにくい:リビングの掃き出し窓、吹き抜け、コーナー窓などを諦めることになる
- 間取りの自由度が下がる:外皮の形状はシンプルなほど有利なので、凹凸のあるプランが取りにくい
- コストが上がる:トリプルガラスや付加断熱など、単価の高い仕様が必要になる
家は、性能を競うために建てるものではありません。毎日を過ごす場所です。明るいリビング、庭が見える窓、風が抜ける配置。それを削って数字を追うのは、順番が違うと思っています。
等級6なら、窓や間取りを大きく我慢せずに届く範囲です。等級7との性能差より、そこで諦めるものの大きさのほうが、暮らしに効いてきます。
ここからが本題:カタログに出ない3つ
ここまでは、調べれば出てくる話です。問題は、等級の数字が高くても快適にならないケースがあること。その原因になる3つを挙げます。
① 気密(C値)は、法規制の対象外です
これが、いちばん知られていない事実だと思います。
省エネ基準が見ているのは、UA値(断熱)と一次エネルギー消費量の2つだけです。気密性能(C値)の基準は、現行の省エネ基準にも断熱等性能等級にも存在しません。
断熱材をどれだけ厚くしても、隙間があればそこから空気が出入りします。計算上のUA値は基準を満たしていても、実際の家は寒い、ということが起こり得ます。
しかもC値は現場で測らないと分かりません。図面からは計算できない数値です。測定していないハウスメーカーでは、そもそも自社の気密性能を把握していないことになります。
かつての基準(平成11年の次世代省エネ基準)にはC値の規定がありましたが、その後の改正で外されました。断熱の計算は精緻になった一方で、気密は事業者の自主性に委ねられたままです。
気密が悪いと、断熱性能が落ちるだけではありません。計画換気が設計どおりに働かなくなります。24時間換気は「決められた経路で空気を動かす」前提の設備なので、隙間があるとそこから空気が入り、狙った換気になりません。
② 熱の出入りは、窓が最大です
断熱というと壁や天井の断熱材を思い浮かべますが、実際に熱が出入りしている場所の中心は窓です。
日本建材・住宅設備産業協会の試算例では、冬に暖房した熱の約58%が開口部から逃げ、夏は入ってくる熱の約73%が開口部からとされています。
ただしこの数値には前提があります。平成11年省エネ基準レベルの断熱性能の住宅で、冬は外気温−2.6℃/室温18℃、夏は外気温33.4℃/室温27℃という条件での試算です。
そのうえで押さえてほしいのは、断熱性能を上げるほど、窓の比率はむしろ高くなるということです。壁や天井の断熱材を厚くすれば、そこからの熱損失は減ります。ところが窓は簡単には減らせません。結果として、高性能な家ほど「窓が弱点」になります。
壁の断熱材を増やすより、サッシとガラスのグレードを上げるほうが、UA値への効きが大きい場面が多くあります。アルミ樹脂複合サッシか、樹脂サッシか。ペアガラスか、Low-Eか、トリプルか。
見積書で確認すべきは、断熱材の厚さよりまずサッシの仕様です。
③ 同じ図面でも、施工で性能は落ちます
UA値は図面から計算した数値です。実際に建った家の測定値ではありません。
設計どおりに施工されていれば計算値どおりになりますが、現場では性能が落ちる箇所がいくつもあります。よく見かけるのは次の3つです。
- 気流止めの未処理:壁の中を空気が上下に通り抜けてしまい、断熱材が効かなくなる
- 配管・配線の貫通部:断熱材や気密シートを貫通する部分の処理が甘いと、そこが弱点になる
- 断熱材の充填不良:筋かいや金物のまわりに隙間が残る。壁を閉じたら見えなくなる
いずれも壁を閉じてしまえば分かりません。だから施工の途中で確認する必要があります。
ここで効いてくるのが、誰が現場を見ているかです。施工会社の自主検査だけなのか、第三者が監理しているのか。依頼先の選び方で変わる部分なので、迷っている段階の方は下の記事も読んでみてください。
契約前に、この5つを聞いてください
ここまでの話を、そのまま質問に落とし込みました。営業担当に聞けば、その会社が何を大事にしているかが分かります。
- 「この土地の地域区分はいくつですか」
即答できない会社は、性能の話に慣れていません - 「C値は測定していますか。実測の平均値はいくつですか」
「全棟測定しています」と数字が出れば信頼できます - 「サッシとガラスの仕様は何ですか」
樹脂かアルミ樹脂複合か、ガラスは何層か - 「気流止めと貫通部の処理は、どの段階で誰が確認しますか」
工程の中に検査が組み込まれているか - 「等級を1つ上げると、いくら増えますか」
金額が即答できる会社は、実際に何度もやっています
まとめ
- 2025年4月から省エネ基準が義務化。等級4は最低ラインで、2030年には等級5へ引き上げ予定
- 等級の基準値は地域区分1〜8で別。市町村単位で決まる
- 北海道の等級4と、東京の等級6は同じUA値0.46
- 省エネ基準はC値(気密)を見ていない。等級が高くても隙間はあり得る
- 熱の出入りは窓が中心。高性能な家ほど窓の比率が上がる
- UA値は図面上の計算値。施工品質は数字に出ない
- 等級6で十分。等級7は窓と間取りを削ることになりやすい
断熱等級は、家の性能を比べるための便利な物差しです。ただし物差しが測っていない部分があるということは、知っておいて損はないと思います。
等級の数字を上げることだけを目標にせず、C値・窓・施工の3つをあわせて確認してください。同じ予算でも、住んでからの快適さが変わります。
※本記事は2026年8月時点の情報にもとづく一般的な解説です。地域区分および各等級の基準値は法令・告示にもとづきますが、ご自身の敷地の地域区分と適用される基準は、必ず設計者・施工会社にご確認ください。等級ごとの目標に関する記述は、筆者の実務経験にもとづく見解であり、公的な推奨ではありません。費用や体感には、断熱以外の要素(間取り・日射・設備・住まい方)も大きく影響します。
- 国土交通省「断熱性能|ラベル項目の解説」(地域ごとにUA値とηAC値の基準値を定めていること。指標はUA値とηAC値)
- 国土交通省「建築物省エネ法のページ」(省エネ基準適合義務化)
- 国土交通省「令和7年4月1日から省エネ基準適合の全面義務化などが施行されます」(2025年4月からの適合義務化)
- 国土交通省「住宅性能表示制度の省エネ上位等級の創設」(等級6・7の基準値)
- 一般社団法人日本建材・住宅設備産業協会(開口部からの熱の出入りの割合。平成11年省エネ基準レベルの住宅での試算例)
UA値の単位はW/(㎡・K)です。地域区分は市町村単位で告示に定められており、本文の該当エリアは目安として記載しています。気密性能(C値)については、平成11年省エネ基準には規定がありましたが、その後の基準改正により現行の省エネ基準・断熱等性能等級には基準がありません。
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各社の断熱性能を星で評価しています。この記事は、その裏側にある話です - 👉 【第2弾:一条工務店ほか7社】
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等級を上げる費用が、総額のどこに乗るのか - 👉 大手とローコスト、30年のメンテナンス費用はどっちが安い?
初期費用だけでなく、持ち続ける費用まで含めた比較
断熱等級を1つ上げると、建築費は上がります。その分を含めた総額と、月々の返済がいくらになるかは、先に確認しておいたほうが判断しやすくなります。
家づくりのお金は「建てる費用」と「持ち続ける費用」の2階建てです。買うかどうかの判断から、建築費の全項目、依頼先の選び方、30年後のメンテナンス費用まで、関連記事を順番に整理した総合ガイドを用意しています。
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それではまた!machiでした🎵



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