家を建てようと思ったとき、駅前やショッピングモールにある「無料の住宅相談カウンター」を見たことがあると思います。大手が運営しているものが複数あります。相談も、会社の紹介も、断りの連絡の代行まで無料です。
一級建築士として22年、設計と現場を見てきました。そのうえで書きます。あそこには行かないほうがいいです。
理由はひとつです。あの無料は、建築費の5〜7%払うことで成り立っています。
無料の理由は、誰もが知っていると思います
カウンターが無料なのは、ハウスメーカーや工務店から紹介料をもらっているからです。これは各社とも公表していて、隠していません。
問題は金額です。
請負4,000万円で計算します。
| 紹介料の率 | 紹介料の額 |
|---|---|
| 5% | 200万円 |
| 6% | 240万円 |
| 7% | 280万円 |
200万円から280万円。
「建築費に上乗せされない」の本当の意味
カウンター側は「紹介料は建築費に上乗せされない。直接契約するのと同じ条件になる」と説明しています。
嘘だと言うつもりはありません。ただ、確かめる方法がありません。
同じ会社に直接行ったときの見積と、カウンター経由の見積を、並べて比べることはできないからです。一人の施主が、両方の入口を試すことはできません。
そして、280万円は実在します。そのお金は、建築費に乗せられているか、工務店の利益から出ているかのどちらかです。前者でないと言われても、確かめるすべがありません。
「直接契約する場合と同じ条件」というのは、提示される定価が同じという意味です。そこから引き出せる限界が同じという意味ではありません。
直接行っていれば、その280万円は交渉のテーブルに残っていたお金です。同じ会社、同じ家、同じ担当者でも、入口が違うだけで着地が変わります。
同じ会社でも、対応が変わります
変わるのは金額だけではありません。会社側の対応そのものが変わります。
自分で調べて「ここが良さそうだ」と訪ねてきたお客さんと、カウンター経由で4〜5社と競合させられた状態で来たお客さん。会社から見れば、この2つはまったく別です。
提案にかける時間、誰が担当につくか、設計者がいつ入るか。会社は限られた人手を配分しています。競合5社の1つとして扱われれば、そこに割かれる労力もそれなりになります。
「相見積もりを取るな」という話ではありません。比較は必要です。ただ、5社に同時に投げるより、自分で3社に絞ってから行くほうが、1社あたりの本気度が伝わります。
相談相手は、建築の専門家とは限りません
アドバイザーになるのに、建築士や宅地建物取引士の資格は必要とされていません。業界未経験から始める人が多い職種です。
悪いことではありません。研修もありますし、要望を整理する仕事なら資格は要らない。ただ、あなたが期待しているのはそれですか。
間取りの良し悪し、その土地で希望が入るか、見積の妥当性。いちばん判断に困るところは、カウンターでは答えが出ません。
「断り代行」は、そこまでの価値がありますか
カウンターの売りのひとつに、断りの連絡の代行があります。自分で断らなくていい、気まずくない。たしかに助かる、と思うかもしれません。
でも、断るのはメール1通です。
「今回は他社さんにお願いすることにしました。ありがとうございました」。これで終わりです。30秒もかかりません。電話でなくていいし、会う必要もない。理由を説明する義務もありません。
メール1通の気まずさを消すために、200~280万円。並べてみると、判断は変わると思います。
もうひとつ。「ここまで色々してくれた担当者に、メール1通で断るのは申し訳ない」と感じる方は多いと思います。間取りを描いてもらった、何度も打ち合わせをした。そう思うのは自然です。
早く伝えたほうが、営業担当は次の見込み客に時間を使えます。引き延ばすほうが、むしろ迷惑です。断りにくさは、こちらが勝手に感じているだけのことが多い。
それに、断りの連絡が自分から会社に行かないということは、あなたと会社の直接のやりとりが、そこで切れるということでもあります。「予算が合わなかった」と直接伝えれば、「では、この仕様を落とせば」と返ってくることがあります。その往復が起きません。
じゃあ、どこに行けばいいのか
「行くな」だけ言って終わるのは無責任なので、書きます。
カウンターに行く人の目的は「会社の名前を教えてもらうこと」ではありません。「どこに頼めばいいか分からない」を解消することです。それは自分でできます。
1. まず、依頼先の種類を決める
ハウスメーカー・工務店・設計事務所。この3つは得意なことが違います。会社を選ぶ前に、どの種類が自分に向いているかを決めるほうが先です。ここを飛ばして会社名から入ると、比較になりません。
種類ごとの違いはハウスメーカー・工務店・設計事務所の違いにまとめてあります。
2. 3社に絞る
4社以上まわると、打ち合わせだけで消耗します。2社だと比較になりません。3社です。
絞り方は、同じ種類から3社ではなく「ハウスメーカー1・工務店2」のように種類をまたぐと、価格と中身の差がはっきり見えます。
ハウスメーカーは19社を同じ物差しで比較した記事があります。114マス中、★5をつけたのは10個だけです。
絞るときの物差し|坪単価は、そのままでは比べられません
坪単価には、決まった計算ルールがありません。同じ会社の同じ家でも、延床面積で割るか、施工面積で割るかで数字が変わります。
施工面積は、玄関ポーチ・バルコニー・小屋裏など、延床面積に入らない部分まで含めた面積です。分母が大きくなるぶん、坪単価は下がります。カタログの坪単価が安く見える会社ほど、施工面積で計算していることがあります。
相見積もりを取るときは、相手がどちらの面積で割っているかを必ず聞いてください。ここを確認しないまま比べると、安い会社と高い会社が入れ替わります。
坪単価に入っていないもの
坪単価は建物本体だけの数字です。実際に払う総額には、ここに次のものが乗ります。
- 地盤改良(必要な土地なら100〜200万円)
- 給排水・ガスの引き込み工事
- 外構(駐車場・門まわり・フェンス・植栽)
- 照明・カーテン・エアコン
- 設計料・確認申請・登記・火災保険・ローン手数料
合計すると本体価格の1.2〜1.4倍になるのが普通です。土地を買うなら、さらにその外側です。総額の組み立ては住宅建築 総資金計画表ツールで確認できます。
重視することは、3つまでに絞ってください
耐震も断熱も保証もデザインも全部ほしい、とすると、残るのは「大手の高い会社」だけです。それは絞り込みになっていません。
捨てるものを決めるのが絞り込みです。3つを選ぶのがつらいなら、まだ優先順位が決まっていないということです。決まってから会社をまわったほうが、打ち合わせは確実に早く進みます。
予算に届く会社が、どうしても見つからないとき
候補を増やしたいときは、予算を上げるより延床面積を減らすほうが効きます。坪単価が変わらなくても、2坪削れば100万円以上動きます。要望を削るのではなく、面積を見直すのが先です。
最後にひとつ。名前が知られているのは全国展開の会社ばかりですが、お住まいの地域には、検索では出てこない優れた工務店が必ずあります。3社のうち1社は、地元の工務店を入れてみてください。
3. 初回に、この5つを聞く
- 標準仕様がどこまでか、書いたものをもらえますか
- この土地で、希望の広さと配置は入りますか
- 見積に入っていない工事は何ですか
- 着工から引き渡しまで何か月ですか
- 担当の設計者と直接話せますか
5つ目が効きます。営業経由の伝言で図面が出てくる会社か、設計者と直接話せる会社か。ここで打ち合わせの質が変わります。
3つ目については、契約後に増えるのはこの4工種に、実際に何が漏れるかを書いています。
カウンターが向いている人もいます
全否定はしません。次の人には向いています。
- とにかく何から始めればいいか分からない
- 平日に自分で調べる時間がまったくない
- 複数社との日程調整を自分でやりたくない
日程の調整は、実際に手間です。ただ、その便利さの値段が5〜7%だと知ったうえで使ってください。知らずに使うのと、知って使うのは違います。
まとめ
- 無料の相談カウンターは、建築会社からの紹介料で運営されている
- その額は建築費の5〜7%。4,000万円なら200〜280万円
- 「建築費に上乗せされない」は本当。ただし値引きの余力はもう使われている
- アドバイザーの約8割は業界未経験。資格要件はない
- 紹介されるのは提携している会社だけ
カウンターが悪いのではありません。あれは広告です。広告だと分かって使うなら、それでいい。問題は、相談だと思って座ってしまうことです。
私はこの記事で紹介料を1円ももらっていません。だからどの会社にも誘導しません。その代わり、選び方は全部書きます。
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この記事は特定の企業を批判するものではありません。無料相談サービス全般に共通する収益の仕組みについて、一級建築士として実務で把握している内容を書いています。紹介料の水準は各社が公表しているものではなく、筆者が実務で見てきた範囲の数字です。



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